私が小学校6年生のとき、修学旅行は日光でした。宿泊する場所は奥日光の湯元温泉。
『湯元の温泉は、卵のくさったようなにおいがします。』と担任の先生が教えてくれたのを今でも覚えています。卵の腐ったような匂いがどのような匂いなのかは分からなかったけれど、実際に湯元温泉に着いたとき、異様な匂いがしたのを覚えています。「これが、卵のくさったにおいなのか」と、やけに納得した記憶があります。そして、すこしだけゆで卵を連想した記憶があります。
中学理科の第一分野で、「鉄と硫黄の混合物を加熱して反応させると・・・」という問題がよく出題されます。夏期講習のテキストでも当然のように出てきました。中3生ならすぐに、
Fe + S →FeS(硫化鉄)
の化学反応式が頭に浮かぶと思います。
夏期講習のテキストでは、こんな問題も出されていました。
硫化鉄にうすい塩酸を加えると( )という気体が発生し、匂いは( )
理科の得意な生徒は、二つの( )内も、すぐ頭に浮かぶようです。
最初の( )の答えは(硫化水素)。これは2020年(令和2年)の千葉県公立高校入試前期で出題されました。 匂いは(卵がくさったようなにおい)で正解です。
学誠舎の中3生は全員が正解でした。 しかし、
『卵の腐った匂いをかいだことあるの?』と生徒に聞いたことがあります。 すると 全員・・
『ない』
ようするに、「卵がくさったようなにおい」は想像の世界、言葉だけの世界で存在し、実際に腐った卵の匂いをかいだ生徒は一人もいませんでした。
『卵のくさったようなにおい』は、硫化水素を含む温泉を語る時の代名詞のように定着していて、温泉らしい匂いとして人気があり、私も嫌いではありません。
でも、実際に「卵」が、あるいは「ゆで卵」が腐るとどんなにおいがするのだろうか?
『先生、卵腐らせてみたら。』という生徒がいましたが、 やめておきます。
(卵がくさったようなにおい)。いまいち、実感がわかず、しっくりしない「におい」ですが、もし、学校のテストや高校入試で、「硫化鉄にうすい塩酸を加えたときに発生する気体はどんなにおいがしますか」の設問に、「異様(硫黄)な匂い」と書いたら✖になるのか、それとも〇になるのだろうか?
時間があったら、どこか近くの卵の腐った匂いのする温泉に行ってみたいと思っています。